PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

PEOPLE

時代に合わせて進化する創作草履

#伊藤 実#伝統工芸

四谷三栄

伊藤 実さん

四谷に店を構える、昭和10年創業の草履専門店「四谷三栄」を訪ね、三代目の伊藤実さんに、四谷三栄のルーツや現在取り組んでいる新しい草履についてお話を伺いました。伊藤実さんは2018年に「ZORI貞奴(さだやっこ)」というモダンなハイヒール草履を発表し、ヨーロッパにもその魅力が伝わり始めています。取材ではお父様の二代目伊藤荘太郎さんにもお話を伺うことができました。

こちらのお店のルーツを教えていただけますでしょうか。

実さん(三代目):明治生まれの祖父が初代なんですが、祖父は新潟から出てきて銀座の阿波屋さんという店で修業していました。当時銀座では店を出せなかったようですが、主人の目の届く場所でと赤坂で店舗を構えました。ですが戦争空襲で赤坂が焼け野原になってしまったので、戦後に四谷の方に移ってきたんですね。

祖父の時代はいわゆる花街の芸者衆の方々にご贔屓にしてもらって商売が成り立っていたのですが、次の親父の代になるとどちらかと言うと着物を着る茶道の方々や日本舞踊の師匠、あとはデパートで買ってくださるお客様が中心となりました。

荘太郎さん(二代目):私が学校卒業した昭和38年頃、新宿の京王百貨店がまだ仮オープンの時に、初めて飛び込みで売り込んだんですよ。当時は百貨店同士の競争も盛んでした。そこで、「四谷三栄」の看板を出して、お客さんを引き付けるものは何だろうと色々と試行錯誤をしたもんです。そういったことは現在でも活きています。

例えば、物流というのは、生産者がいて、メーカーさんがいて、問屋があって小売りがあって、消費者に届くっていう流れが昔はありましたが、そうした流れを飛び越えましてね。私が産地まで行って素材探しに奔走して、素材を手に入れたら今度はそれを分業の職方へ出して作ってもらう、ということをやりました。そうした新しい作り方が、良いものが安く作れて、お客さんに受けたんです。

草履という伝統工芸を続けていくことで大変なことはありますでしょうか?

実さん:そうですね、この業界に限らずですが、材料の値段が上がっていることがまず一つあります。草履でいうとコルクの値段が上がっています。あとは革も。革は大阪神戸から仕入れて、その革に顔料で色を吹き付けてるのですが、その塗料自体も値段も高くなってきています。

あと、草履というのは非常に細かい分業制でできています。鼻緒ひとつ取っても鼻緒を作る職人、通すだけの職人、ミシンで縫うだけの職人がいたり、最後に鼻緒と台ができてきたら草履を挿げる(すげる)作業、鼻緒を穴に通して調整する作業をする職人がいたり。こうした各担当の職人さんが辞めてしまって継承されないと、草履ができあがらなくなってしまう。そのような危機感は続けていくうえで常にありますね。

まだ早いかとは思いますが、次の代へ継承することなど考えてらっしゃいますか?

実さん:うちには中1の双子の娘がいますが、まだ仕事のことは話しません。ただ、着物って着る人の8割方女性なんですよね。そうした意味では、女性が牽引して草履を作るのもありかな、とは思っています。

草履を作るうえで伊藤さんが大切にされていることは何でしょうか?

実さん:「履き良かったわ」と一人でも多くのお客様が言っていただけると嬉しいです。うちはネット販売は一切しないんですね。実際に履いてもらってお客さんの目の前で鼻緒をその人に合うように調整し、お客さんに満足してもらう事を大事にしています。足の形って十人十色で、単純に踵から指先の長さだけでなく、甲の高さや幅もみんな違います。

あとはその後のアフターケアも大事で、踵の部分がすり減ったら交換したり、そうしたメンテナンスを通じてお客さんと繋がっていくことがとても重要で、草履作りの一つの魅力かもしれません。

草履の概念を覆す斬新なデザインでありながら履き心地は非常に良い

何か新しいチャレンジしていることがあったら教えてください

実さん:通常の草履の形以外に、今は室内用の草履、スリッパではない室内履きを作っています。コロナ渦になって皆さんが家で過ごす時間が増えましたので、何かいい素材のものがないかなと考えています。例えば、裏がフェルト生地になっている、いわゆる畳用の「楽屋履き」というものがありますが、それを現代風にアレンジしたらどうか、など試行錯誤しています。まだ8割くらいの出来で未発表ですが、鼻緒がなく足首で止める感じで、履き心地が楽で気持ちの良いものになっています。色合いやバリエーション、素材探しも含めてまだ試行錯誤しています。

四谷三栄は三代続いていますが、段々と着物着る人も減ってきています。そのなかで、やっぱりこだわりの物と言うか、物作りの面白さを皆さんに伝えていくためにも、新しいことにチャレンジしています。

荘太郎さん:履物以外にもバッグなんかも作ってますが、デザインを考えるときに、よく上野の国立博物館に行きましてね、作品を見ながら頭の中にデザインを描いてイメージするんですよ。花をあしらってこういう構図にしようとか。図録を買ってきて眺めながらバッグに合うかなと考えて、アレンジして構図を決めたり。何と言うか、小説家のように頭の中で、ストーリーを描くんです。

分業の草履作りのなかで、最初にどういった物を作るか、ある程度企画をしてね、デザインを考え、それを今度は鼻緒屋さんに持って行って、こういった鼻緒を作ってくれ、ってお願いするんです。それから、何回も試行錯誤を繰り返します。草履というのは、結局飾りもんではなく、履くもんですからね。

2018年にLEXUSの匠プロジェクトから生まれた商品から改良した新しい配色のZORIシリーズ。鼻緒の前の部分が極端に長いのが特徴

実さん:この変わったデザインの草履は英語でZORIという商品のシリーズなんですが、数年前のある企画から生まれたものです。今までと逆の発想で鼻緒の長さを変えて提案してみたり。履きやすいようにクッションを入れてみたり。今までのものとは全然違うんですよ、これは。ですが、履き物という原点は崩さない。靴とは違いますからね。あくまでも履き物。それを今の消費者のニーズに合わせて進化させませんとなかなか販売に結び付きません。これなんかは海外の方に受けていて、フランスやイギリスから注文があったので直接持って行きました。あとは東京都から頼まれて日本大使館にもお持ちしました。これからも新しい草履の魅力を世界に発信していきたいです。

伊藤 実(いとう まこと)

1975年新宿生まれ。1998年神奈川大学卒業後、四谷三栄三代目に。伝統を受け継ぎながらも時代のニーズに合わせた斬新なデザインの草履を追求。洋服とも合わせられるZORIは、海外からも注目されている。

文化を伝える人たち

PEOPLE

おすすめタグ

RECOMMENDED TAG

もっと楽しむ高野山
興福寺国宝特別公開「五重塔」

01

02

/ 02